2021年7月21日に、働く人の仕事のストレスやメンタルヘルスの状況を全国的に調査した「令和2年 労働安全衛生調査(実態調査)」が発表されました。これはほぼ毎年、厚生労働省から発表されているもので、働く人がどのくらいの割合でストレスを感じているのか、企業はどのくらいメンタルヘルス対策に取り組んでいるのか、などがまとめられた調査となっています。
(全国から無作為に約14,000の事業場と約18,000人の働く人を選び、約8,000の事業場、約8,900人の働く人が回答した結果です。)
最新の令和2年版(2020年10月現在の状況を調査したもの)はどんな内容になっているのか、見ていきましょう。
働く人のストレスはどんなものが多い?
ストレスとなっていることがある、と回答した働く人は54.2%。
そのストレスの内訳を見ていくと、多い順に、仕事の量(42.5%)、仕事の失敗や責任の発生など(35.0%)、仕事の質(30.9%)、対人関係(27.0%)となっています。
さらに、年代別に見ると、仕事の量と質は50代が最も高く(62.9%)、仕事の失敗・責任の発生は20歳未満や20〜29歳の若い年代が高い割合になっており、対人関係は20〜29歳と40〜49歳が比較的多いようです。
年代別の傾向としては、20代では仕事の失敗などがストレスになり、30代では仕事の質や、昇進などに伴う変化、会社の将来性などにストレスを感じ、40代では仕事量や責任、対人関係に、50代では仕事の量や責任に、60代になると(ストレスを感じている人の割合は減りますが)雇用の安定性に関するストレスが出てくる、といったところでしょうか。
その感じたストレスを相談する相手として選ぶのは「上司・同僚」「家族・友人」が多く、特に女性は家族・友人に相談することが多く、男性の方が上司・同僚に相談する傾向があるようです。
また、年代別では、若い年代の方が家族・友人に相談する割合が高くなっています。
企業などのメンタルヘルス対策はどのくらいおこなわれている?
なんらかのメンタルヘルス対策をおこなっている事業所は、約6割。50人以上の社員を雇用しているところでは約9割、特に、500人以上雇用しているところでは98%以上の事業場が、なんらかのメンタルヘルス対策を実施しています。
多い対策としては、ストレスチェックを実施している事業場が、約6割(50人以上雇用しているところでは9割以上が実施)。 次いで、職場環境の評価・改善(ストレスチェックの結果の分析を含む)、メンタルヘルス不調の人に必要な配慮を行うこと、メンタルヘルスに関する相談体制を事業所内に整備すること、となっています。
(ちなみに私のような外部の相談機関の活用も、全体の15.8%、1,000人以上の企業では約半数がおこなっています。)
長時間働く人は増えている?減っている?
前回の平成30年調査(2018年時点)では、1ヶ月に45時間を超える長時間労働をした労働者がいる事業場は25.0%。80時間を超える長時間労働は7.0%という結果でした。
今回の結果は45時間を超えたものが16.3%、80時間を超えたものが2.5%となっており、全体的に長時間労働は減っている、と言えそうです。
2018年から2020年というのは、2018年に働き方改革関連法が成立し、2019年は法律で残業時間の上限が明確に設けられることになった年でもあります。さらに2020年の新型コロナウイルスの流行と、それにともなう働き方の変化が重なり、長時間労働の減少につながったのかもしれません。
とはいえ、上記で挙げたように仕事のストレスの第1位は仕事の量ですし、働く人の相談においては「働く時間が長くてつらい」という話をよく聞きます。業種によっても異なりますし、もしかすると長時間労働が水面下に潜ってしまったということかもしれません。この点については、それぞれの働く人の実態をしっかり見ていく必要がありそうです。
自分と同じような年代の働く人のストレスがどうなっているのかや、自分の所属と同じような事業場の規模のデータを見るのも、いろいろ発見があるのではないかと思います。興味が湧いた方は実際の報告書を読んでみるのもいいかもしれませんね。
令和2年 労働安全衛生調査(実態調査)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r02-46-50_gaikyo.pdf
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EASE Mental Management 代表、働く人と企業のメンタルヘルスケアとカウンセリングが専門の 公認心理師 / 臨床心理士。精神科・心療内科クリニック、EAP(働く人のメンタルヘルス支援)企業、株式会社ディー・エヌ・エー 専属カウンセラーを経て開業(カウンセラー歴17年)。