なぜ話すだけのカウンセリングは意味がないと感じるのか

なぜ話すだけのカウンセリングは意味がないと感じるのか

カウンセリングを受けたけれども十分な効果を感じられずに「意味がない」と感じてしまっている人に、なぜそのように感じたのか理由を説明します。次のカウンセリングで何をすれば効果を感じられるのか、カウンセリングの効果が出る理由についても説明します。

話すだけで変わることもある

冒頭からタイトルと矛盾しますが、話すだけのカウンセリングが意味を持つこともあります。
例えば、今まで誰にも話せなかったことを初めて話せたとしたら、それだけでも変化を感じるでしょう。

自分の中にしまっておいたものを「出せた」「話せた」ことで楽になることを、『カタルシス』と言います。 「話せてスッキリした」というのはこの感覚です。

共感や承認が足りなかった?

一方、話しただけではスッキリしないこともあります。

「既に何度か話しているけれども問題が一向に解決しません」という場合、たとえば「それは大変でしたね」「あなたができる限りのことをしてきたんだな、ということが伝わってきますよ」など、認められたり受け入れてもらえたりすることで相談した意味を感じる場合もあるでしょう。
「理解してもらう」「自分を承認してもらう」「自分がおかしかったり、間違っているのではないんだ」と感じることでホッとする、安心する感覚。安心感や存在を承認される感覚、1人で悩んでいた孤独感が癒されることによって、意味が得られる場合もあります。 カウンセリングでは受容、共感が大事、といわれるのは、理解して受け入れてもらえることによって気持ちの変化を感じる人が多いからです。

ただ、「前のカウンセリングでは、話を聞いてくれるだけであまり意味がなかった」という方も時々おられます。
多くのカウンセラーは受容・共感のトレーニングは受けている(はず)なので、そうおっしゃった方の話をよくよく聞いてみると、この共感や承認まではカウンセラーにしてもらえたが、そこからの変化が感じられず「意味がない」と感じておられるケースが多いようです。

専門的なカウンセリングの利点は脳の回路が書き換わること

脳は『神経可塑性』といって、神経回路が書き換わる性質を持っています。 あなたが『apple』を『リンゴ』と認識するのも、自転車が上手に乗れるようになるのも、そのように神経回路が書き換わったからです。

少し難しく感じるかもしれませんが、人間の記憶は3種類あると言われています。

ひとつが『意味記憶』。『apple』=『リンゴ』である、といったような言葉の意味や固有名詞、概念に関する記憶です。この意味記憶は、脳の『側頭葉』が担当しているとされています。

2つ目が『エピソード記憶』。「先週土曜日にカレーを食べた」などの経験や出来事についての記憶です。エピソード記憶は、脳の『海馬』や『間脳』等が担当していると考えられています。

3つ目が『手続き記憶』です。自転車の乗り方や楽器の弾き方など、意識を伴わずに体が覚えている記憶のことを指します。この手続き記憶は、『小脳』や『大脳基底核』が関係しています。

こういったことについて説明したのは、カウンセリングで脳の回路を書き換えるといっても、アプローチの仕方がすこし違うからです。
たとえば、カウンセリングにいらっしゃる一定の方は、カウンセリングによって『気づき』を得たい、という目的でお越しになります。カウンセラーからの質問や意見によって、その体験の意味が変わるとか、今まで繋がらなかった方法と解決策が紐づくとか、新たな視点に気づくことなどを求めて来られます。
例えば、「”apple”はリンゴのことだと思っていましたが、企業のことだったんですね!」とか、「先週土曜日に食べたのはカレーじゃなくてハヤシライスだったかもしれません」とか、「別に土曜日だからといってカレーを食べる必要はないのかもしれません」とか(たとえが上手くなくてすみません)、自分の中の理解や意味が変わることで問題だと思っていたものが問題ではなくなったり、スッキリしたりすることがあります。
つまりは『意味記憶』や『エピソード記憶』の神経回路の変化によって、問題だと感じていたものが変化するわけです。そのサポートをカウンセリングがおこなっていることになります。

しかし、一方でカウンセリングに来られる方でこれも多いのが、「頭では◯◯と考えればいいとわかっている。頭ではこういう行動を取ればいいとわかっている。でも、なぜかできない。」という相談です。
たとえば、同じようなタイプの人を目の前にするとなぜか萎縮してしまう、とか、頭ではこの仕事にチャレンジした方がいいとわかっているのだけれど、体が動いてくれない、などです。 いくら「先週土曜日にカレーを食べた」「3ヶ月前に仕事でこういうことがあって…」というエピソード記憶(過去の記憶)を語ったとしても、意識されていない記憶=手続き記憶に刻まれた記憶は変わらないのです。 いくら海馬や間脳の領域では「この人は◯◯さんで、声が大きいだけで実は元気で先日も助けてくれた」と理解していたとしても、小脳や大脳基底核の領域では「声の大きな人が近くに来たら、危険なので自分を守りなさい」と無意識に記憶されているかもしれません。
手続き記憶は、身体に刻まれた記憶、と言ったりもします。そのため、身体の感覚を使いながらカウンセリングの中で『体験』することによって、脳の回路が書き換わっていくのです。 これを『修正(感情)体験』といいます。 これは、単にご相談者が話をしてカウンセラーが話を聞く、というだけでは起こらないことです。話を聞くだけではなく、カウンセラーとともに感情的・身体的な体験を通じながら、新しい体験を腑に落としていくのです。

まとめ

ご相談者が話をし、カウンセラーがしっかりそれを聞くことはとても大事なことです。しかし、それだけでは解決しないこともあります。
専門的なカウンセリングの利点としては、利害関係を抜きにして、普段話せないことを自由に話せること、話したことに対して共感や承認があり否定されずに受け入れられる安心感が得られること、そして心理的な技術によって、脳の回路を書き換えるサポートが得られることがあげられます。

EASE Mental Management では、専門的なカウンセリングを提供し必要な変化が得られるようサポートしてまいります。
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