仕事に気が乗らないパターン④ 付随するリスクを恐れているとき
例)Dさんは、日頃の努力が認められて、願ってもない大きな仕事のチャンスを得ました。
以前から「いつかはチャレンジしてみたい」と思っていた仕事で、そのチャンスが巡ってきたことはとても嬉しいのですが、
「失敗したらどうしよう」
「成功して多くの人の目に触れたら、本当は実力のないことがバレてしまうのではないか」
などと考えてしまい、取りかかる気持ちになれない自分にとても焦りを感じています。
「こんなことではいけない」と自分を奮い立たせるのですが、いざ仕事を進めようとすると同時に言いようのない不安や焦りが起こり、その気持ちの葛藤に疲れてしまい、なかなか前に進めません。
そんな自分を自分で責め、自己嫌悪を感じてしまいます。
Dさんのようなケースでは、モチベーションの素となる「〇〇したい」という気持ちはあるものの、
それと同じくらい「リスクを避けたい」という気持ちが働き、
エネルギーが拮抗して身動きが取れなくなっています。
目標に接近したいというエネルギーと、リスクを回避したいというエネルギーが拮抗し、打ち消し合っている状態なので、エネルギーが浪費され、とても疲れてしまいます。
このようなケースは、インポスター症候群(たとえ成功したとしても、自分に実力があるとは思えず、自分に自信が持てない人々)にもよく見られます。
今まで成功してきたのはたまたま運が良かったからで、今回こそは自分の実力がないことが露呈してしまう、と感じてしまうのです。
このような場合、まず一つは、自分が何を避けようとしているのか、何を恐れているのかを明確にしてみます。
そして、自分が恐れているリスクは現実的なものか、それが起こる確率はどのくらいか、もしそれが起こったとしても対処する方法があるのではないか、と考えてみます。
失敗を怖いと感じることはおかしなことではありません。
しかし、たいていの場合、それは全ての終わりとはならないことも事実です。
怖くてどうしても向き合うことが難しい場合には、遠慮せずに専門家を頼ってみてください。
もう一つは、それが「できる」と思えると、やれるのです。
自分に「できる」と思えることを、心理学では「自己効力感」と言い、この感覚はモチベーションと大いに関わっています。
この「できる」という感覚を得るには、
■今までに(大変だと思ったがやってみたら)できたこと、達成したことをリストアップする
■既にできていること、自分の既に持っているものに目を向ける
さらに、少しでも進んだこと、できたことに目を向け、それをとても喜び、自分を褒めてあげる
■成功している他の人(特に、失敗を乗り越えて成功した人なら尚良し)を参考にする
といったことを試すことが役に立つでしょう。
また、他の人が自分と同じ体験をしていたら、何と声をかけてあげるか想像してみたり、
体を整える(リラックスする)ようにするのも良いでしょう。
EASE Mental Management 代表、働く人と企業のメンタルヘルスケアとカウンセリングが専門の 公認心理師 / 臨床心理士。精神科・心療内科クリニック、EAP(働く人のメンタルヘルス支援)企業、株式会社ディー・エヌ・エー 専属カウンセラーを経て開業(カウンセラー歴17年)。