カウンセリングの“中身”を知るー心理療法の選び方

カウンセリングの“中身”を知るー心理療法の選び方

認知行動療法、ソマティック・エクスペリエンシング®︎、EMDR…心理療法はどう選ぶ?

認知行動療法やソマティック・エクスペリエンシング®︎、EMDRなど、専門的なカウンセリングや心理療法が世の中に浸透してきたことに伴い、「ソマティック・エクスペリエンシングに興味があります」「認知行動療法を受けてみたいです」「EMDRを受けることはできますか?」など、ご相談者様の方から希望の心理療法を提示されることも増えてまいりました。
こういったご希望は私としては大歓迎で、ご興味を持たれた心理療法からカウンセリングを始められ、その効果を確認していただいたのちに、さらにその方の主訴や状態により合うような心理療法を、ご本人とご相談しながら組み合わせておこなっていくというケースも多く見られます。
そしてこのような場合、お互いに意見を出し合うことで、ご相談者様とカウンセラーとの間でとても良いコラボレーションが起こることも多くあります。
…とはいえ、通常はよほど心理療法やカウンセリングに興味を持たなければ具体的な各種心理療法の名前など知らなくて当然ですので、そのようなお申し出を求めているわけではないのですが、少し、心理療法に興味を持っていらっしゃり、カウンセリングはどのように進められていくのか知りたいなと思っていらっしゃる方に向けて、あるいは私がおこなっている「統合的心理療法」の内容に興味がある心理職の方、あるいはカウンセリングは話を聞くだけじゃないの?と思っている方に向けて、実際のカウンセリング(心理療法)ではどのような考えのもとにどのような心理療法が選択されて進められていくのか、ご紹介できればと思います。

自分に合った心理療法とは?

例えば、何か身体的な不調を感じて病院に行くときのことを考えてみましょう。
ある症状を訴えて病院にかかった際に、まずはこの症状に対してこのお薬を使い、この症状に対してはこちらのお薬を使ってみて、それでしばらく様子を見ましょう。そのように提案された経験はありませんか?
カウンセリングは、この「薬」が「心理療法」に置き換わったものと考えると想像しやすいかと思います。
お薬にもそれぞれ薬効と特徴があるように、心理療法にもそれぞれ特徴と、その心理療法が「得意なこと」があります。
例えば、最近お問い合わせの増えている「ソマティック・エクスペリエンシング®︎」。
この心理療法は主に身体の感覚や動きに注目し、その人にとってトラウマとなった場面において、体に起こった自然な反応が何らかの理由でストップさせられてしまい、自然なエネルギーの表出ができなかった、そのためにトラウマが身体に残っているという見立てのもと、トラウマの体験の処理をおこなっていく方法です。
ですので、何らかのトラウマに悩んでいる方、あるいは今起こっている問題の背景に、何らかの嫌だった体験が影響している方に特に向いている方法です。
また、嫌な体験をあまり話したくない、という方にとっても、言葉で話す必要がないので取り組みやすい心理療法であると言えます。
また、カーっとしやすい、あるいは反対にぼーっとしやすい、など、感情や精神的な調整がききにくい、という方に対しても、神経を調整するためのいくつかの方法を持っている心理療法なので、気持ちの調整が難しいと感じていらっしゃる方にも使うことがあります。

人間関係や生きづらさ…どうアプローチする?

さて、人間関係の問題や生きづらさを抱えている場合はどうでしょう?
人との関係でストレスを感じやすかったり、ある人とのことになると自分の感情が抑えられなくなってしまう場合、あるいは他の人が信じられず、孤独感を感じていたり、慢性的な悲しみや焦燥感を抱えていたりする方の場合。
何か明確な傷つきがあった、とハッキリしていることもあれば、「あるべきもの」や「あってほしかったもの」(例えば自分を守ってくれる、助けてくれる、理解してくれる温かく安定した存在)がなかったことによる苦しみや心許なさを感じている場合もあるでしょう。
背景に何があるかはよくわからないけれど、慢性的な生きづらさを抱えている、という場合も多くあります。
背景に「感情」にまつわる課題や、人との「関係」にまつわる課題がある場合、DAReやAEDP™︎、EFT(エモーションフォーカストセラピー)といった心理療法が奏功することがあります。例えば、AEDP™︎やEFTといった心理療法は、私たちが本心として感じる「コア」の部分にある感情をきちんと感じることができると、私たちは癒され、本来の自分を取り戻すことができる、という見立てのもと、「感情」をターゲットにおこなう心理療法になります。
また、DAReやAEDP™︎は、専門用語でいうと「愛着」の傷つきを得意とする心理療法なので、孤独感や満たされなさ、生きづらさなどを抱えている場合に、安心感や大切にされている感覚を十分に得られることを助ける心理療法です。

「考え方を変えたい」ときには

「考え方を変えたい」「考え方のヒントが欲しい」「他の考え方がないかどうか知りたい」というご要望もよくあります。
こういったニーズをいただく際、心理療法としては認知行動療法や解決志向アプローチを検討します。
「認知」というのは、物事の見方や捉え方、考え方のことを指し、今の自分がどのような考え方をしていて、どのようなメカニズムで問題が起こってしまうのかを理解し、そのメカニズムを変化させるという心理療法が認知行動療法です。
解決志向アプローチは、その名の通り問題の原因に注目するよりも、解決した未来に焦点を当てて、それを達成する方法を探していきますが、その過程で、何が役に立つか、今まで上手くいった方法は何だったか、試していない方法は何か、などの多種多様な質問をカウンセラーが投げかけていきます。
その質問自体が考え方の転換をもたらすプロセスとなっているので、自然と新しい考えが見つかるということがよく起こります。
そのため、「今の自分の考えでは膠着しているので、他の考え方がないかどうか知りたい」というご要望の方に用いることが多い心理療法です。

「トラウマを扱いたい」ときには

また、トラウマティックな出来事や、その出来事による嫌な感情や身体の感覚に悩まされているという場合、トラウマ療法としてEMDRやボディー・コネクト・セラピー、TFT(思考場療法)のトラウマの手順などを使うことがあります。
トラウマの内容によっては、先に挙げたソマティック・エクスペリエンシング®︎や、DARe、AEDP™︎などを使う場合もあります。
それぞれの心理療法の詳しい説明は割愛しますが、上記からお伝えしたいのは、ご相談者様の悩みや希望に応じた心理療法というのが様々あり、ただ単に話を聞いているのみではないということと、ご相談者様のお話を伺い、また一緒に検討する中で、ニーズと状態に合った心理療法を使っていくということです。

おわりに

今回はそれぞれの心理療法の特徴や用いられ方について、一つの例をご紹介しました。
心理療法の種類について、全くわからなくても何の問題もありませんし、そのためにカウンセラーがいるのでご不明な際はお任せいただいて全く構いません。
もし、ご自身も心理療法について知ってみたい、という方は上記を参考にしていただいたり、ご遠慮なくカウンセラーに質問していただければと思います。
各種の心理療法は、ご相談者様をサポートするための一つの方法です。
納得いかない点や、興味のある心理療法がありましたら、是非カウンセラーに聞いてみていただければと思います。